JLA English Site

私とライフセービング

Vol.41 – 斉田 季実治/ Kimiharu SAITA

2022.01.21 (Fri)

「気象予報士がライフセーバーを目指した理由」

私は子供のころに川で助けられたことがあります。秋田市内に住んでいた3歳のころ、家のそばを流れる太平川に誤って転落、対岸にいた女性が声を上げたことで、近くで工事をしていた男性が救い上げてくれたと聞いています。記憶にはありませんが、私は買ってもらったばかりの靴の片方が流されたことに泣いていたそうです。

もし同じような場面に遭遇したら、真っ先に助けにいくような大人になりたい。少し大きくなって、そう思っていたことは覚えていますが、実際は小学校の高学年になるまで、ほとんど泳ぐことができませんでした。溺れた経験が邪魔をして、無意識に水を怖がっていたのかもしれません。

私は今、気象予報士として、いのちを守るための情報発信に努めています。気象キャスターとしてテレビに出演して15年以上になりますが、防災気象情報は常に進化し、大きな災害が起きるたびに、新たな情報や仕組みが作られてきました。私は正しい情報を発信するだけではなく、必要な人に伝わり、行動に繋がってはじめて情報は意味があるものだと思っています。そのためには、情報を活用する現場の声を聴く必要があると考えて、様々な資格を取得し、交流を持つことを心がけてきました。街の防災に関わる「防災士」、役所の危機管理に携わる「危機管理士」、そして海浜でいのちを守る「ライフセーバー」です。

一年間のプール通いを経て、ライフセーバーの講習に参加しましたが、40歳を過ぎてから大学生に混じって資格を取るのはたいへんでした。還暦でライフセーバーを目指していた細田和彦さんとバディを組んでいなかったら途中で投げ出していたかもしれません。ライフセーバーは救助能力はもちろんのこと、それ以上に危機管理能力を有し、「救った」ことを喜ぶのではなく、「守った」ことを喜ぶべきである。と教本に書かれていたことも心の支えになりました。熱中症や高波など、気象の知識が役に立つと確信を持てたからです。

2020年6月に気象業務法施行規則等が改正され、赤と白の格子模様の旗を「津波フラッグ」として、全国の海水浴場や海岸付近で導入する取り組みが始まりました。聴覚に障害のある方や、波音や風で音が聞き取りにくい遊泳中の方なども津波警報等の発表を知ることができます。近著「新・いのちを守る気象情報」にも記しましたが、この「津波フラッグ」の普及に貢献することが、気象予報士でライフセーバーでもある私の新たな役目であり、多くのいのちを守ることに繋がると考えています。

斉田 季実治
Kimiharu SAITA
株式会社ヒンメル・コンサルティング 代表取締役
気象予報士・防災士・危機管理士1級

皆さまからのご支援が
水辺の事故ゼロへつながります

皆さまからのご寄付はWater Safety教育の普及事業などに活用します