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私とライフセービング

Vol.54 – 石川 優太 / Yuta ISHIKAWA

2024.01.22 (Mon)

ゴールの先に救う命がある。
私がライフセービングに興味を持ったのも、今こうして活動し続けているのも、
この言葉が全てのきっかけであり、理由です。

 

 

何でも卒なくこなす優等生として、私は高校まで生きてきました。周りからは何でもできる子だと思われていたかもしれませんが、勉強もスポーツも、苦手な事でもとにかく努力し続けて勝ち取ってきました。

 

しかしどんな人もいつか壁に当たるもので、高校のサッカー部で大きな挫折をしました。何にでもぶつかってきたそれまでと違って、この時だけは「損するのは自分だけだし、別にいいかな」と思い、全てを捨てて逃げました。当時の私には、周りの選手や環境は自分の努力では到底超えられそうもない壁に、コーチ陣は全員敵に見えていました。

 

これは初めての挫折経験であるとともに、「誰かのためになるような事の方が楽しいな」と感じたきっかけでもありました。サッカーでダメでも他なら自分が活きる場所があると思い、筋トレに熱中してみたり、学年1位の成績を取ってみたり、生徒主催の授業を開いてみたり、色々なことをしてみました。そうしていく中で自分ひとりの為だけにやることよりも、誰かとやること・誰かのためになることの方が遥かに楽しいし、これが自分の居場所だと思うようになっていきました。

 

「自分だけじゃなく、それが誰かのためにもなる。そんな素敵な活動ってどこかにあるかな」と考えながら高校生活を終えました。

 

 

大学生になり、「ゴールの先に救う命がある。」という言葉に出会い、気がついたら法政大学のクラブに入会していました。大学の先生の何かの発言でライフセービングという単語を聞き、なんとなく検索してみて、たまたま知った。というきっかけはとても些細なものです。

 

これこそ自分の探していたものだ!と思い活動を始めたものの、新しい挑戦は困難の連続でしかありませんでした。水泳経験も救急救命の知識もなく、何も処置ができない自分。全くついていけない練習。勝てない大会。誰のためにもなれていない感覚。辞めてしまおうかと何度考えたかは分かりません。笑

 

挙げきれないほど感じた無力感の中でも、くじけず続けられた理由は、自分が何か努力した結果変えることができた世界や、救えた命の実感があったからでした。何とか助ける事ができた遊泳客の方からの感謝の言葉も、自分の姿を見て新しいライフセービング競技に取り組み始めた後輩の姿も、自分があそこで踏ん張ったからこそ見る事ができた世界です。これが自分の勝利のためだけでは、絶対にここまで来れませんでした。

 

ひとりで頑張ることには、おそらく限界があります。もちろん自分のために頑張るのもすごく楽しいです。でも、その先に救う命があるし、共鳴してくれる仲間がいるからこそ、より頑張れる。これってすごく素敵なことじゃありませんか?人生の貴重な時間を使って、誰かを救うために何か動いていける。それだけで本当に素晴らしい活動をしていると私は思いますし、今これを読んでいるあなたにもそう感じて欲しいと心の底から思っています。

 

 

今、私は法政大学と下田LSCのメンバーとしてだけでなく、JLA救助救命本部の委員としても活動しています。シミュレーション審査会がライフセーバーの皆さんにも分かりやすい活動内容かと思います。将来的には、様々な海水浴場のパトロールを横串で引っ張っていくような組織が作れたら良いなと考えていたりします。

 

「クラブの垣根を超えた交流って、スポーツの面では沢山あるけれど、パトロールという切り口では少ない気がするし、互いに学び合っていけばもっと良くなるのでは?」

と、多くの方と関わる中で感じたことが委員会へ加入したきっかけです。周囲の環境が変わっても10年以上前の監視方法を今でもそのまま続けている場所は少なくありません。ライフセーバー自身も、周囲の環境も大きく変わっていく中で、より良いパトロールを作っていけるきっかけを作っていきます。

 

 

ライフセービングは本当に素敵な活動だと確信していますし、そう思う人を増やしたいと思っています。ですが、大学では、ライフセーバーだと自己紹介すると、潜るやつ?セーリング?海の怖い人?と聞かれます。

こんなに素敵な活動が隠れているのはもったいないです。私たち自身がこの魅力に気づくとともに、海を守る仲間が増えていくことを願っています。

石川 優太
Yuta ISHIKAWA

JLA救助救命本部 パトロール・レスキュー委員会 委員

JLA救助救命本部 ドローンパトロール委員会 委員

法政大学サーフライフセービングクラブ所属

下田ライフセービングクラブ所属

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