ライフセービングを始めたきっかけ
大学サッカー引退後、大学院では何をやりたいか。その問いが元を辿ればライフセービングを始めたきっかけである。幼少期の頃の家族の思い出は各地の海での様々な遊び。中高は海辺の学校に通い、授業や部活では走ったり泳いだり、その後もよく海で友人と遊んでいた。自分を育ててくれた海に恩返しをしたい、自分が出来ることは何かと考えた時、身体を動かせて人のためになる海での活動がライフセービングだった。その様な考えのもと、大学クラブには所属をせずに、浜のクラブに連絡をとり活動を開始した。
当時も現在も自分が一番お世話になっている逗子の海に関わる人・遊ぶ人が何事もなく楽しんで帰ることが出来る様にしたいというのが活動の根底にある。

私にとってのライフセービングとは
逗子でライフセービングを始めた2013年当初、クラブメンバーは少なく、組織として何も確立しておらず、浜の状況も相当荒れていた。その中でも経験のない事、教本にない事など、様々な事象が多々起こり、現場の少ないメンバーで意見交わし、それぞれ対応をしてきた。私の活動初年度、当時の監視長(初代監視長)が「兎に角、未然防止できることはやる!」という意向で、沖パトロールする際は入水している全てのお客様に声を掛け、ビーチパトロールする際もその日の注意事項を伝えるということを徹底していたことは、現在でも非常に大切なことであると考えている。また、当時のクラブ長が「俺らはライフガードなんだ」とプロ意識を常に持てと教えてくれたこと、これもまた非常に大切なことであると感じている。未然防止をすること、プロであるということを意識すると必然と様々な形でのガードや海を経験する必要があり周辺知識も求められるため、単にレスキューボードを漕げるだけでは足りないことを痛感する。海に来る方の遊び方は様々であり、砂で山を作る、日光浴をする、海で浮く、釣りをする、シュノーケリングをする、波乗りをする、水上バイクに乗る、船に乗る、ウインドサーフィンをする、ヨットに乗る、SUPをする等々、まだまだ沢山ある。それぞれの楽しみ方や注意しなければならないことを理解した上で声掛けをするのか、とりあえずルールだけを一方的に説明するのか、どちらも間違ってはいないが受け手の捉え方は全然異なることは容易に想像できる。となれば、オーシャンウーマン・マンである必要があるし、学び続け、色々な観点からの未然防止に努める必要がある。

一方で、一人でできることは限られており、「救命の連鎖」には関わる人との高い連携が必須であり、同じ目標に向かって切磋琢磨する仲間が必要不可欠である。同じクラブでの活動であっても、複数クラブから組まれるイベントの活動であっても、チームとして一つの目標(無事故・未然防止)を達成すべく組織貢献し、同時に人としての成長も求められる。
それぞれを追求するにあたって、大切にしていることが「ワクワクすること」である。長くなるので割愛するが、一つの原動力になるキーワードであると考えている。
10年強しか活動をしてきていないが、ユニフォームを着て活動をしている際に有事対応後「あの時は助けてくれてありがとう」など声を掛けていただいたり、プライベートで通っていた喫茶店で突然人が倒れた場面に遭遇した際には自ずと体が動き対応し、救急隊への引き継ぎを行い、後日談で「無事に意識が戻った、ありがとう」と伝えられるといった経験は少なからずあり、活動をして良かったと心底感じている。
前置きは長くなったが、私にとってのライフセービングとは目標に向かって仲間と様々なことを探究することであり、終わることのないライフワークである。

今後の活動について
少しでもワクワクして一緒に活動する仲間が増えることが嬉しいと考えている中で、コロナ禍のように世の中の情勢も変わることであり、自身や仲間のライフステージも変わることを考えると、クラブとして「内」「外」共に成長し続ける必要があると考えている。「外」の観点からは、仲間が増えれば必然的に活動する機会を増やす必要があり、活動機会を増やすためにはより様々なスキル向上を個々が努めなければならない。現状は幸いなことに逗子の海岸監視以外にも様々な浜や海の活動、加えて海以外にもイベントガードの経験をする機会を頂けているし、それを仕切るし支えることができる仲間もいる。言わずもがな、更なるガードスキル向上が求められる。「内」の観点では、ファミリービーチを謳っている逗子海岸において、嬉しいことに来場客は家族連れ・お子様を連れた方が多いが、仲間のライフステージが変わり続ける中で、クラブとしても同様に対応ができるようにしていきたいと個人的に考える。仲間が活動をしやすい環境を整えることが現在の私が行うべき課題であると考えている。ワクワクする仲間がワクワクし続けられるように、そして活動の拠点もありがたいことに広がっているので、ワクワクが伝播して、ライフセービングに携わる方がワクワクし、水際で会う方々が皆ワクワクするようになればと思うし、それによって一つでも未然防止に繋がれば良いし、ひいては水辺での事故がなくなるような形を探求していけるように今後も活動していきたい。

2013年 逗子SLSC一期生
2014年 逗子SLSC 監視長
2020年 NPO法人逗子サーフライフセービングクラブ設立 副理事長(現職)
第三管区海上保安本部 海上安全指導員