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JLA 30th Anniversary

監視救助活動の現場、過去と未来:石川仁憲

2021.11.26 (Fri)

1963年に始まった、監視員・救助員・ライフガードと称される若者達による海辺の監視救助活動は、1985年頃には主要な大学にライフセービングクラブが創設されて、その人数は増加し、主に大学生が中心の活動として全国に広がって行きました。一方、近年では社会人や学生で構成された地域のライフセービングクラブが増え、大学クラブ等も含めると2002年~2021年までの約20年間で78クラブから149クラブと約2倍となりました。その結果、現在ライフセーバーが活動する海水浴場等は全国約200ヵ所であり、わが国の海水浴場数の2割程度ではあるものの、都市近郊や地域の主要な海水浴場にはほぼライフセーバーが活動しています。

パトタワー1

ライフセーバーによる監視救助活動について、2015~2019年の統計データによれば、総利用者9,862,220人/年に対し、45,379人/年のライフセーバーが活動を行い、救助件数はPreventive Action(意識ありの溺者の救助)が2,318件/年、Emergency Care (意識なしの溺者の救助)が平均27件/年で、これらは主に離岸流や沖向きの風が原因でした。また、ライフセーバーは溺水だけでなく、クラゲやエイなどの刺胞毒、熱中症、擦過傷、切創、捻挫、打撲など様々な傷病に対する応急手当も行っており、その件数は、救助件数より1オーダー大きい18,340件/年、また救急搬送は139件/年です。

ライフセーバーが活動する海水浴場等では、このような救助救護が毎シーズン行われてきましたが、2020年と2021年は、Covid-19感染拡大防止の観点から各地の海水浴場が不開設になったことで、海岸利用に関する潜在リスクへの対応が注目される機会となりました。海水浴場が不開設の場合、海岸の安全管理は、海水浴場開設者(市町村、組合等)ではなく海岸管理者(都道府県、一部市町)が行うことになります。しかし、「海岸法」には海水浴などの公衆の安全利用について十分言及されていません。従来、海水浴場での公衆の安全利用については、海岸管理者が作成した水浴場条例や要綱、市町村が作成した条例や規則等によって明文化され、それを基に市町村や組合等が海水浴場を開設し、その環境下で安全管理が行われてきました。しかし、これらは海水浴場を対象にしたものであり、海岸への適用を想定したものではありません。したがって、どのようなルールで安全管理を行うのかが課題であり、各地で関係諸機関により様々な対応が行われました。そして、この議論は、海水浴場に限らず海岸全域の安全管理を今後どうしていくかという問題提起にもつながりました。

海岸はそもそも危険性が内在する自然公物ですが、自由使用の場であり、子どもたちをはじめ多くの人々にとって様々な学びや経験を与え、心身の健康維持に欠かせません。このような観点からも、夏季海岸利用を海水浴場に限定するのはそもそも無理があるでしょう。ライフセーバーの活動は、社会のニーズにあわせて変容していくと考えられますが、そのひとつに既に沖縄県で実施されているように活動エリアを海水浴場に限らないということも求められます。さらには防災の観点からすれば通年の活動、つまり時間的、空間的な枠にとらわれない活動への展開が考えられます。この場合、限られたライフセーバーのリソースで広域な水辺での確実な事故防止のためには、ライフセーバーと公的救助機関や関係諸機関との積極的な連携が必要不可欠であり、また、先端技術の導入もひとつの方法かもしれません。そして、何よりも安定的、持続的な活動のためには、地域のコミュニティと協調し、職業としての確立も整えていかなければならないと考えます。

IRB

寄稿:石川 仁憲(いしかわ としのり)

Toshi Ishikawa

1991年~東海大学海洋学部ライフセービングクラブ、相良ライフセービングクラブ

海を学ぶ大学にて、ライフセービングが海の理解をさらに深める機会になると考えたことがきっかけでライフセーバーに。

現在はJLA救助救命本部長として、ILSや公的救助機関、関係諸機関との連携促進、パトロールやレスキュー、FA等の水辺の事故防止や救助救命活動に関する技術開発、関連事業のとりまとめを行う

 

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