JLAでは、①海水浴場の安全性に関するリスク評価(2015年~)、②傷病者への対応と救急隊との連携に注目したシミュレーション審査会(2016年~)、③消防機関へのIRB技術提供(2019年~)、④自治体や公的救助機関、研究機関と連携したAIやIoTを活用した海辺のみまもりシステム等の先端技術の開発・導入(2018年~)、⑤パトロールログの電子化(2021年~)等の高度化事業を推進しています。
高度化事業の目的は、各事業を通じて安全性の高い海水浴場(海岸)の創出と、高い救助力を有するライフセーバーの育成を図るととともに、子どもたちが積極的に海に関わり、多くの人がより安心して楽しめる海岸環境を次世代にむけて整えることです。また、事業展開を通じて、地域のライフセーバーと公的救助機関や関係諸機関との連携促進を図り、ライフセーバーが活動する安心安全な海水浴場を全国に増やすことです。
ここで、わが国の海水浴場における溺水事故の48 %が離岸流に起因し、諸外国でも離岸流による海辺の事故はオーストラリア57 %、アメリカ54 %、イギリス58 %、ニュージーランド49 %であり、離岸流による水難事故防止は国際的な課題です。離岸流事故を防ぐためには、利用者自身が時々刻々と変化する離岸流を認識し、危険回避できることが求められますが、波と違って流れは視覚的に認識しづらいことから、多くの人にとって難しいといえます。
また、重大事故に繋がらないためには、ライフセーバーには離岸流により流されている利用者の早期発見救助が求められますが、広い海水浴場で、数万人の利用者に対して数十人のライフセーバーにより監視救助活動を行っているのが現状です。このような課題に対し、海岸に設置した定点カメラの撮影画像をAIがリアルタイムで分析し、時間的、空間的に変化する離岸流の発生を自動検知して、水難事故防止と迅速な救助につなげるIoTを活用したシステムが「海辺のみまもりシステム」です。
このシステムには、オフショアの風が発生した際のアラート機能もついています。システムに連動したスマートフォンアプリ「Water Safety」も開発し、海岸利用者への情報提供や注意喚起を行っています。是非、ダウンロードしてみてください。また、助けてサインの自動検知機能や津波防災機能も2022年までに追加される予定です。今後はドローンによるパトロール&レスキュー機能も加え、誰でもライフセーバー、レスキュアーになれる社会の実現を目指していきます。
Water Safetyアプリの紹介
海辺のみまもりシステムはWater Safetyアプリと連動しています。このアプリは、海岸状況の提供だけでなく、離岸流やオフショアの発生を通知します。また、ライフセーバーが活動する全国の海水浴場マップもご覧いただけます。海辺の事故防止にご活用ください。
海辺のみまもりシステム ~Water Safetyアプリ~
寄稿:石川仁憲 いしかわとしのり
1991年~東海大学海洋学部ライフセービングクラブ、相良ライフセービングクラブ
海を学ぶ大学にて、ライフセービングが海の理解をさらに深める機会になると考えたことがきっかけでライフセーバーに。
現在はJLA救助救命本部長として、ILSや公的救助機関、関係諸機関との連携促進、パトロールやレスキュー、FA等の水辺の事故防止や救助救命活動に関する技術開発、関連事業のとりまとめを行う