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自治体とライフセービングが海を通して創る文化とは③:御宿町 殿岡豊様

2022.01.07 (Fri)

学生選手権などこれまで多くの競技会を開催地として受け入れてくださっている千葉県御宿町。

ライフセービングとの関わりにおいて町にはどのような効果が得られたのか。

今回は、御宿町役場の殿岡豊さんにお話を伺いました。

「御宿町で受け入れたライフセービングの「意味」を知った思い」

 

ライフセーバーのイメージやライフセービングについての最初の印象はいかがでしたか?

殿岡:若い頃は単なる海の監視員・救助員というイメージでしたが、ライフセーバーの皆さんと仕事で関わるようになって、ライフセービングを知れば知るほど深い「意味」を感じるようになりました。御宿町としては競技会場としてもお付き合いが長いですが、競技種目や、そのあり方にも一つ一つ「意味」があり、全てがスポーツを超えて人命救助やチームワークに繋がっていることを知って驚きました。関わるライフセーバーの皆さんからお話を聞くこともそうですが、自分で興味を持ってライフセービングへ目を向けると、日頃の御宿ライフセービングクラブの活動とその「意味」がつながりました。

 

現在御宿町は日本ライフセービング協会と協定を結んでいただいておりますが、そこに至る経緯や思いにはどのようなものがありますか?

殿岡: 先ほど話した競技会について、実はおつきあいが始まった当初は、ライフセーバーの皆さんがたくさん御宿町に来てくれて嬉しいな、宿泊も増えて経済効果もあるな、という程度だったのです。しかし、夏の御宿ライフセービングクラブの活動、1年通じての取り組みに関わってライフセーバーの実際の活動を知ると、違う思いが生まれました。ライフセービングへの理解が深まると、「海」という大切な自然を持つ御宿町にとって、ライフセービング、ライフセーバーの存在がとても重要だと思えたのです。さらに2011年東日本大震災は、「海」との関わりを考える大きなターニングポイントでした。

房総半島が台風襲来を受けた時、御宿町も多大な被害があり、その直後に開催予定であった競技会を受け入れることができるのか悩みましたが、開催したことにより町に活気が戻り、ライフセーバー から元気を与えられた気がして、受け入れて正解だったと思いました。

今では協定を結び、競技会開催で全国のライフセーバーが町に集まってくれることを誇りに思って歓迎し、さらに町と海をつなげるライフセービングとして様々な意識啓発につながっていると思います。

 

学校教育現場でのライフセービング導入についてはどう思われますか?

殿岡:御宿町の小学生、中学生が「海」という自然環境で命の大切さを学べる、とても良い取り組みだと思います。私も小さい頃、海によく遊びに行きましたが、時代とともに、海離れが進んだと思います。ライフセービングとの関わりを持った子ども達は、地元の「海」へ関心を向けるようになったのではないでしょうか。1609年に沖合へ漂着した外国船乗組員を村人が助けた人命救助の史実も語り継がれています。ライフセービングの授業を通じて、何が危険なのか、どうすれば安全で楽しいのか実際の海で知り、人の命を守ることの大切さを体験することは、町の史実とつながるとても貴重な経験なのです。授業を見たことが何度かあるのですが、子ども達の表情や声が変わってくるのがわかります。実はその授業を経験した子どもの中から、自分の育った町、海を守りたい、関わりたい、という理由で、役場の職員採用や事業のお手伝いに手を上げてくれる人が出てきたのです。とても嬉しいことです。

これからライフセービングに期待することはなんでしょうか。

殿岡:個人の思い出もありますが、ライフセービングというのは様々な活動と深い理念があり、海に囲まれた日本にとって、今で言うSDGsだと思います。「海」と言う自然と向き合って、環境を守って、危険も知って楽しむことをライフセービングで学んで、伝えて持続継続して行くことは、究極の御宿町らしいSDGsではないかと思うのです。そこで今、足りないと感じているのは、ライフセービングの学校教育現場以外の子ども達への機会創出です。次のステージの中期目標として、地域ライフセービングクラブの発展を願っています。ライフセービングの指導者も足りないと思っています。そんな人材育成、ライフセービングの発展に自治体のサポートも不可欠です。全国に都道府県協会も増えていると聞きましたが、御宿町の取り組みが良いモデルケースとなって、地域とライフセービングの発展に広がれば嬉しいです。

 

殿岡 豊 プロフィール

御宿町生まれ。2年ほど東京で働いたのち、地元へUターンして御宿町役場へ勤めることになり、今年で在職26年目。水産関係を担当する部署や管理部門へ所属していたが、産業観光課へ異動した時に、初めてライフセービングを知る。現在、御宿町総務課勤務。

 

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