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JLA 30th Anniversary

シミュレーション審査会のめざす救助救命:菊地太

2022.01.10 (Mon)

200mを今より30秒速く泳ぐことや、30秒速く走れるようになるには、並大抵な努力では到達できません。一方、次に引き継ぐ者が欲している情報や、関係者の確保、荷物の確保、搬送支援など事前に準備するだけで、30秒どころかそれ以上が容易に縮まるのです。

 

 「消防白書」では、救急隊の119番通報から医療機関到着までは全国平均30.5分。

 救急隊の119番通報から現場到着までは全国平均8.7分。

 

 救急隊は現場に到着してから、様々な情報収集や関係者の確保、変化していくバイタルの確認を実施します。救急隊が現場から早く医療機関に出発するために、救急隊が到着する前に、初めから現場にいる我々に出来ることはたくさんあるのです。

 我々に求められているのは、水辺の事故防止や救助、救命といったライフセーバーだけの技術ではなく、傷病者を医療機関までリレーする一員としての技術の向上です。

 

 我々の取り組み次第で、30.5分が28分や27分になる。

 時間短縮は、確実に誰かの笑顔に繋がります。助かる者が助かるのです。

 

 高度なチームワークは、有事活動だけでなく、普段の監視業務にも確実に活かされ、水辺利用者の安全安心に繋がります。少ない人数で多くのエリアをカバーするには、ライフセーバー間の連携能力が大切です。

 海に囲まれる1億2,000万人のこの国で、水辺の安全利用手技は、最低でも数百万人程度に伝わってほしいと願います。一方、素晴らしい活動を継続していてもライフセービング活動の認知度は30年前から大きく変わっていないと考えます。情報発信の方策に変化をもって皆さんと一緒に作り上げていき、公益財団法人として国民の期待に応える事業を継続していきます。

 

 JLAシミュレーション審査会は今後も引き続き、数多くの地域で実施していきます。審査会で得られる成果として、

  1. 各地域の消防行政と親睦を深め、相互理解を得ることにより有事対応での連携促進につながります。
  2. 実施チームの感じる緊張感は、実災害のそれに近い状態を作り出せ、そこで得た検討推奨事項を、今後の活動に役立てることができます。
  3. 他浜の活動から、使用資器材や連携技能、公的救助機関との引継ぎや連携行動を学ぶことができます。
  4. 各公的救助機関からの講評を頂くことにより、ライフセーバーが引き継ぐ相手が、どんなことを求めていているのか知り、今後の救助救護活動に役立てることができます。
  5. 多くの参加者によってマスメディアが注目し、社会的にライフセーバーの活動実態を周知することができます。水辺の事故防止につながるだけでなく、ライフセーバーを志す者、ライフセービングを応援して頂ける方を増やすことにもつながるかもしれません。

寄稿: 菊地 太・きくち ふとし

1992年~鎌倉サーフライフセービングクラブ、東京消防庁ライフセービングクラブ

好きな女性が活動するライフセービング(当時は監視員)に携わって、自分の想いを確かめたかったことを機にライフセービングを始める。

現在JLAにおいて、救助救命本部副本部長、パトロール・レスキュー委員会委員長、サーフトレーニング委員会委員、アスリート委員会委員、ロングディスタンス競技分科会委員、広報室委員、ライフセービング事業チーム委員を兼任。

 

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