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北海道の海浜利用について:北海道ライフセービング協会 上野哲也

2022.02.08 (Tue)

初めにこの場をお借りして、ライフセービング活動にご理解頂き、御協力していただいている方に、心より感謝申し上げます。ありがとうございます。

 

 私は海が大好きです。何もしないでただ眺めていても心が癒されるというか、都会の喧騒を離れ時計を気にしない一日はとても充実します。

 ライフセービングをはじめたのは20歳の頃です。

水泳のコーチのバイトを始め、コーチなら心肺蘇生法や救助の資格を取りなさいと先輩に言われたのがきっかけです。

取得後、夏の週末に近くの海水浴場、大浜海水浴場(現小樽ドリームビーチ)に監視員のボランティアとして行ったのがライフセービングの始まりです。

何千人もの海水浴客がいるのに、ライフセーバーはゼロ。その頃はライフセーバーという言葉さえなく、いるのは僕一人でした。こんなことでいいのか?と思ったことを思い出します。

1992年、25歳の時に水上バイクを購入し、北海道で初めてパトロール業務で水上バイクを使い始めたのが私です。当時は珍しかったのでとても注目を浴びた事も思い出します。

さて、ここで札幌ライフセービングクラブ創設のきっかけを三つお話しします。

一つ目、1997年、午後になってオフショアの風(出し風・沖に向って吹く風)が出てきてそろそろ帰ろうかと思った時です。波間に手をつないだ小学生の兄弟の姿が見え隠れしていました。楽しそうに遊んでいる様にも見えますが何か様子が変です。

波のうねり具合によってはまだ足がつくのか、ジャンプしながら顔を水面に出しています。

河口の付近ということで、その辺りは急激に深くなっています。また沖に向った流れもあり大変に危険な所です。水上バイクで急いで二人の近くに行きます。こわばった顔で今にも泣きそうな兄弟。その時家族はアサリ採りに夢中です。二人を乗せ家族のいる所に送り届けます。もしあの時、異変に気が付いていなかったらと思うとぞっとします。

二つ目、1999年盛夏(平日)、妻が小樽市銭函、新川河口のオタネ浜に行っていました。そこで大学生が友達と遊泳中に溺れました。近くに居た人たちに助けられましたが心肺停止状態です。たまたま看護婦さんのグループがいたので彼女達が心肺蘇生をします。救急車が到着するのに30分以上かかったそうです。翌日の新聞には亡くなったと出ていました。

三つ目、2002年8月、二週にわたり水上バイクの事故で4名が亡くなりました。その時私は同じ海岸にいたのです。天気も良く、凪のような海面状態で夏真っ盛りの陽気でした。穏やかな日なのになぜ事故が起こるのか不思議に思ったのを思い出します。

 悲しい事故を減らす為に何かい方法はないのか、自分なりに解決策を求めた結果が札幌ライフセービングクラブです。ライフセーバーがいない海岸で事故を減らせないか、考えを巡らせましたが自分一人で出来ることは限られます。しかし、同じ思いの人が集まれば大きな力となる。そう思いクラブを立ち上げました。現在は石狩市と苫前町の海水浴場を一つつ担当させて頂いています。

 夏になるとテレビや新聞でみる海難事故ですが、北海道は特に日本海側で亡くなる人が多く、海水浴場からほんの100M離れたところで事故が起きます。一日で何千人も集まる海水浴場は事故がゼロ、そのすぐ横の利用者が少ない海浜で死亡事故が起きます。それだけ海水浴場以外での海水浴は危険と言えるのだと思います。「だから海水浴場以外で泳いではいけない」そういう意見もあります。

 現在、北海道ライフセービング協会が支援している海水浴場は石狩湾を中心に4つの海水浴場、小樽ドリームビーチ・石狩市あそビーチいしかり・厚田海浜プール・苫前町夕陽ケ丘ホワイトビーチです。

65名のライフセーバーが活動してます。

2019年コロナ渦前の道内では37の海水浴場が道に届け出されています。しかしながら、全体の9%の海水浴場にしかライフセーバーがおりません。最低限、自治体などが管理をする海水浴場ではライフセーバーが活動出来ることが理想だと思っています。

 前NPO法人日本ライフセービング協会北海道支部が出来てから、北海道では行政、海上保安庁等、関係機関との連携がスムーズに進むようになってきました。これは、北海道のライフセービングが発展する一つの要因だったと思います。各クラブが海水浴場や地域と連携をとっていくことは大変重要だと考えています。今後は新たなライフセービングクラブやライフセーバーの数が増えていくことが望まれます。担当する海水浴場の数も増えていくよう働きかけを続けていきたいと思っています。そして海水浴場以外で起こる水難事故も減らせる様、ライフセービングの幅を広げようと思っています。

 

寄稿:上野 哲矢(うえの てつや)

2003年札幌ライフセービングクラブ創設

2012年JLA北海道支部長

2019年北海道ライフセービング協会代表

 

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