人々が水辺で安全に楽しんでいただけるよう、事故を“未然”に防ぐことがライフセービングの本質です。
溺れや怪我から「助ける」より「守る」がライフセーバーにとって、より相応しい活動の軸と言えます。そこでさらに私は、“真の未然”は「教育」にあると思っています。
「助ける」「守る」の前に位置する「伝える」が鍵だという考え方です。
そこでお役立ていただきたいのがICT教材である『e-Lifesaving』(助成:日本財団)です。
水辺の事故防止の心構えや、安全のための知識と技能について、子どもから大人まで楽しく学び合えるサイトです。
小・中学校の学習指導要領に沿い「水泳運動の心得」「安全確保につながる運動」や「水泳や水辺の事故防止に関する心得」等の実践的理解につながる構成になっています。学校での授業や、地域のジュニアライフセービングはもちろんのこと、水辺に関わるアクティビティやスポーツ等のファンデーションプログラムとしてもご活用いただけます。
しかし私は、このe-Lifesavingが水辺の安全教育に万能であると思っていません。
言うまでもなく、子ども達の体験活動に勝るものはないからです。
確かにプールや海での活動が困難であったコロナ禍においては、最低限の学びを提供できたかもしれません。
一方で子ども達の「海や川は楽しい!」「プールは気持ちいい!」等の体験活動への機会については、失われた2年と言っても過言ではありません。
今一度、そのような時代を生きる子ども達の心に寄り添い、笑顔になれる時間や体を精一杯動かす時間を大切につくってあげたいものです。
水辺はそうした機会を自然と創出できる場所です。
体験から得られる学びは、子どもの人生において、“豊かさと潤い”を与えてくれる大切な要素です。
そうした中にe-Lifesavingが寄り添い、子どもも大人も学び合えるような存在になれたら嬉しいです。
近い将来、水辺の安全に対する意識やそなえが「何か特別な教育」として存在するのではなく、「島国日本のごく当たり前のカタチ」として成長していけることを強く、強く思い描いています(学ぶ機会の創出=制度設計/伝えられる人材育成=他団体・省庁連携/学齢に応じたプログラム内容=学びのフレームワーク)。
JLA設立30周年の節目を迎え、ライフセービングから多くを学ばせていただいた者として、これからは“ライフセービングで社会に何ができるか?”を常に考え、皆さんとともに具現化していきたいと思っています。
寄稿: 松本 貴行(まつもと たかゆき)
1995年~ 日本体育大学ライフセービングクラブ、神津島ライフセービングクラブ、新島ライフセービングクラブ、岩井ライフセービングクラブ、成城学園ライフセービングクラブ
大学入学時、友人に付き添ったライフセービング部の説明会で「あなたは大切な人の命を救えますか?」という問いかけに、大きな衝撃を受けたことがきっかけでライフセービングをはじめる。
現在はJLA副理事長、JLA教育本部長としてe-lifesavingの開発に従事。