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ライフセービングが学校の部活動に発展した経緯:島田貴史

2022.04.14 (Thu)

~意志あるところに道は開ける~

 

「目の前で人が倒れた時に、あなたは手を差し伸べることはできますか?」

この言葉は、私が1994年に日本体育大学に入学して「ライフセーバー」になりたいと決意した大切な言葉です。そして、現在も「人のために尽くす精神」・「生命尊重」の理念がライフセービングの柱だと私は考えています。また、この人道的で道徳的な要素は学校の教科活動として相応しいと感じています。そして、各学校においてライフセービングが認められていく要素に教科活動や課外活動での実践が評価を受けて活動の幅を広げているようです。その発展の流れの中に部活動の誕生があると私は考えています。正に私の勤める成城学園はそうでした。

また、何事もそうだと思いますが、強い意志を持ち続けることで新しい道を切り開くことができる「意志あるところに道は開ける」と私も感じています。ライフセービングを学校で発展させていくためにはこの考え方が大事です。そして、スモールステップで良いので生徒や同僚の先生方にこの活動を知って頂き、実践を積み重ねていくことが重要です。学校においてライフセービングを実践するチャンスはたくさんあります。ライフセーバーで教師の方々には、是非、学校教育においてライフセービングを実施してもらいたいと強く思っています。そこで、今回は学校においてライフセービングが発展した1例として、私の勤める成城学園での発展の経緯をお話し致します。

 成城学園におけるライフセービングは、現日本ライフセービング協会副理事長で成城学園中学校高等学校の松本貴行教諭が1999年に高等学校の課外授業「ライフセービング」を始めたことが産声となります。千葉県南房総市岩井海岸にて3泊4日で実施しました。当時、私もその課外授業のお手伝いをさせて頂きました。翌年2000年には同じく高等学校の選択科目として自由研究「ライフセービング」も始まります。「人のために尽くす精神」・「生命尊重」の理念を柱とした教科活動としてライフセービングが成城学園で知られていくことになります。次に行事との関わりです。成城学園には中学校1年生に「海の学校」という3泊4日の臨海学校があります。私が成城学園に赴任した2001年頃は2㎞の遠泳を行う伝統行事でした。2002年この行事に、課外授業ライフセービングを選択した高校生たちがレスキューデモンストレーション(チューブレスキュー・ボードレスキュー)を披露することになります。この時に中学校の先生方がライフセービングを知ることになり、その後、ライフセービングが先生方に理解され始めて2007年には海の学校の内容に遠泳と「いのちの教育」と題して活動内容にライフセービングが加わり、この年から遠泳とライフセービングの2本の柱で実施する行事となり海の学校の質が高まりました。「いのちの教育」とは宿泊先でのBLS実習と海辺でのライフセービング実習(ニッパーボードやチューブレスキューの体験)です。その後4年間2本柱の海の学校が続きます。

 2011年3月11日、東日本大震災が起こります。この年、初めて海の学校が中止となりました。当時の風評で海辺への放射能問題や大地震への不安がありその年は実施できませんでした。しかしながら、津波などの被害から水辺での事故防止の意識が高まったことで成城学園では海の学校を遠泳とライフセービングの2本柱から水辺で安全に楽しむことができる知識と技能の習得へ行事内容が移行する大きな変化となったのです。そのタイミングで登場したのが「BLS」と「Water safety」という心肺蘇生や水辺での事故防止の知識と技能を習得する体験活動でした。そして、2012年から成城学園の海の学校の柱はライフセービングとなりました。同時期にライフセービングは愛好会として活動が認められていたので、愛好会に所属する高校生たちが海の学校のライフセービング実習や運営サポートに参加することになります。2013年には100周年プロジェクト「いのち守りあう成城ファミリー」というプロジェクトが始動しました。これは学内外の方々に奉仕活動でBLS講習会を提供する地域貢献プロジェクトです。この時、学園から26体のダミー人形を提供して頂きました。これはこの活動の普及の鍵になったと思います。そして、2017年には10,000名以上の方々にBLS講習会や出張授業を行い、多くの方々にBLSの普及活動を実施することができました。その活動サポートに高校生ライフセーバーが携わりました。

このように、学校行事や学園教育をライフセーバーの高校生たちが支えたことで先生方や学園関係者から応援される団体となり、2017年に部活動へ昇格、現在に至っております。成城学園に加えて、学校団体としては十文字学園中学校高等学校、昭和第一学園、日本体育大学荏原高等学校においてもライフセービングが部活動として認められて活動しております。また、各学校においても各教科活動、学校行事、防災訓練など学校における様々な側面でライフセービングが実践されており、その人道的、道徳的な要素が評価されています。各学校の部活動発展においても学校運営の一部にライフセービングがリンクしています。私の視点においては学校教育の教科活動や課外活動、総合的な学習などでライフセービング実施することで理解を得ることが大事であるということです。その過程の中でライフセービンに興味を持つ生徒が生まれます。そして、将来的に部活動へ発展していく過程に進むことが1つの方法ではないでしょうか。

 

最後に、今後の展望として公立学校においてライフセービングをどのように普及していくかが大切な目標となっています。加えて、教科活動においては、「BLS」と「Water safety」を保健体育の授業において定着させることです。成城学園がある世田谷区においては近隣の公立学校へ出張授業の提供は実施していますので、今後はその指導を各学校の先生方にバトンタッチできるように方法を探っています。また、スポーツ競技活動については、プール競技の紹介を中心に世田谷区立中学校の水泳部の先生方に提供して、プール競技の側面からライフセービングの普及活動を進めていく計画です。

冒頭にも話しましたが、「意志あるところに道は開ける」この考え方をいつも大切にして今後も学校教育やライフセービングに携わりたいと思います。

 

寄稿:島田 貴史(しまだ たかし)

1994年~ 日本体育大学ライフセービングクラブ、新島ライフセービングクラブ、成城学園ライフセービングクラブ、成城学園高等学校ライフセービングクラブ

「目の前で人が倒れた時に、あなたは手を差し伸べることはできますか?」

私が1994年に日本体育大学に入学して部活動説明会でこの言葉を問いかけられて「ライフセーバー」になりたいと思ったことがきっかけでライフセービングを始める。

現在はJLA中学高校委員会 委員長・学校教育推進委員会 委員

各地域の中学校や高等学校への教科活動や部活動へのライフセービング普及活動及びBLS/Water Safetyのサポーター講習会実施に尽力している。

 

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