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私とライフセービング

Vol.37 – 篠原知美/ Tomomi SHINOHARA

2021.11.25 (Thu)

<ライフセービングを始めたきっかけ>

私は2012年夏にトライアスロンデビューして、10年目を迎えました。

きっかけは2011年、坐骨神経痛のリハビリのためプールでウォーキングをしていましたが、歩くだけではつまらなくなり水泳を始め、2ヵ月後にアクアスロン大会に出場。「あとBikeでトライアスロンだよ!」と言われ、気がついたらトライアスロンにハマり現在に至ります。

小学5年生から大学、社会人マスターズまで陸上部の短距離(100m)。泳ぐのは25mくらいで大人になってからスイマーなのでクロールしかできず、クイックターンもまだ練習中ですが、トライアスロンのレースではSwimはいつも上位で上がることができ、OWS大会でもラッキーなことにいつも入賞しています。(葉山OWS4.5kmで総合2位になったことも。)

そのため “泳げる人” と思われがちなのですが、実はトライアスロンを始めるまでは海で泳いだこともなく、パニック障害による “過呼吸持ち” で、Swim中に過呼吸&パニックで溺れ、救助された経験もあります。またひどい過呼吸発作の時は、全身麻痺で呂律がまわらなくなり、手の指さえも動かせず、まったく身動きがとれなくなり救急搬送されたり…。荒れた海で水を飲み、パニックから過呼吸になりブイにしがみついたり、ロングトライアスロンなど1500人以上が一斉にスタートするようなレースでは、殴られる、蹴られる、脚つかまれる、ゴーグル外されるなどバトルにあい、スタート数分で過呼吸になり、恐怖で顔を水につけられなくなりしばらく必死で浮いていたり。(少し休んでレース復帰できることもあり)

以前、世界選手権前の練習で出たトライアスロン大会でも、スタート直後のバトルで過呼吸になり、必死で顔を水面上に出している時、近くにいたライフセーバーさんと目が合いました。「助かった。あのセーバーさんが見守っていてくれる!」すぐに近くに寄ってきてくれ、レスキューチューブを投げてくれました。そこでしばし休んで呼吸が整ってきたころ、「大丈夫ですか?やめないよねぇ?」との声が。もしあの時、「大丈夫ですか?やめますか?」と聞かれたら迷わず 「はい(泣)」 とうなずいていたでしょう。私の様子を見てそう判断し声がけしてくださったのでしょうが、お陰でピリっと喝が入り、「行ってきます!」と再び泳ぎ始め、先ほどまでのは一体何だったの?くらいガンガン抜きまくり、お陰で無事入賞できたことも。

そんなこともありましたが、「過呼吸になったらどうしよう」「溺れたらどうしよう」といつもSwimはとても不安で怖く、スタート前は怖くてテンションも下がりまくり、不安と緊張でいつも重度の “おうち帰りたい病” に。そしてレース中は岸が近づいて来て足が着くと 「あぁ良かった、完泳できた!無事帰ってこれらた!」とゴーグルの中が涙でいっぱいになっています。ですので、いつも黄色と赤のユニフォームを見かけるとホッと安心でき、できるだけ見つけてもらえるように近くを泳ぐようにしています。レース後は、ボードなどを片付けているセーバーさんたちにはいつも感謝の気持ちがいっぱいで、「お世話になりました。ありがとうございます!」と、お礼を言いに行っています。

そんな中、数年前のトライアスロン大会でのSwim競技中に友人が事故に遭ってしまいました。

どんなに泳げる人でも、経験者でも、健康でいても、いつ何が起こるかわからない・・・。
本当にショックで落ち込むと同時に海などSwim中に潜む危険性を改めて実感しました。そしてトライアスリートは “速く泳ぐための技術” は熱心に勉強をするのに、水辺での危険性や注意事項など学ぶ機会が少ない、また何かあった時の対処法、救助法などを学んでいる人も多くない、ということにも気づかされました。

自身の過呼吸に加えそのようなこともあり、まずは水や海の危険性について学ぶため、より安全に泳ぐため、事故などを防ぎたいという気持ちで2019年5月に御宿で 『ベイシックライフセーバー』を受講しました。

しかし、受講するにあたり、「過呼吸になるような人がライフセーバー?」という声もあり、とても不安で悩みました。

実習前、指導員に「実は私は過呼吸になってしまうことがあります。大丈夫でしょうか?」と伝えると

「大丈夫です!慌てずに自分のペースでいいから確実にね。」と言ってくださり、涙が出そうでした。

そしてテキストを開いた最初のページの写真に衝撃を受けました。車いすに乗った男性が黄色と赤のライフセーバーのユニフォームを着てトランシーバーで話しているのです。

ライフセービングは、ボランティア活動を基本とし、誰でも参加できる活動であり、たとえ泳げなくとも、身体的ハンディがあろうとも、社会奉仕と生命尊厳の精神に基づき、その活動は否定されるものではない。

「溺れた者を救う」という救助活動から、「溺れない安心な環境をマネジメントすること」 もライフセービングであるということを知り、「私でもいいんだ。それならば私ができることをしよう!」と心に決めました。

私にできることの1つ。一次救命措置BLSについては、国際線客室乗務員として長年勤務していたことからAEDをはじめずっと訓練をしてきました。当時、病院や救急以外民間では日本国内で最初にAEDが取り入れられ機内に導入されました。退職後も定期的に消防署や日赤の講習会を受講、また受けるだけではなく指導する側の「応急手当普及員」の資格も取得。実際に大変な交通事故現場に遭遇し、胸骨圧迫、AEDを使用し救急隊員に引き継いだ経験も。
いざという時、1人でも多くの人が動けるようなるため、AEDの使用方法などを知ってもらうために救命講習会を開催したり、講習会への受講の啓発活動をしています。先日も、大会で最初に選手に関わるであろうTO@Technical Official(トライアスロン審判員)のみなさん対象の救命講習会も開催しました。

<ライフセーバーの経験を通じて>
ライフセーバーデビューは2019年館山わかしおトライアスロン大会、通称タテトラ。まずは試泳エリアの監視業務。しかし、監視というよりもレースについてのよろず質問コーナー状態。大会要綱に書かれていたり、説明会で説明があったはず・・・のことが次々と質問される。いかに読んでいないか、聞いていないか、普段の自分も含め非常に反省するところでした。(大会要綱、注意事項などはしっかりと目を通しましょう。大事なことだから書いてあるのです!)

レースが始まり浜での監視中、選手が1人ピックアップされてIRBで戻ってきました。話しかけられているのに返事がない、後ろから声をかけられているのに振り向かない・・・

あっ、もしかして聞こえない(聴覚障がい者)?
手話で話しかけると返事があり、救護室でメディカルスタッフとの通訳をしました。手話は学生時代から学んでいて、以前は区の登録の手話通訳者として活動もしていました。

選手にもいろいろな方がいます。英語で話すのと同じように簡単な手話を覚えたり、どのようにしたら通じるのかなど、コミュニケーション手段を確保することも必要だと思っています。

またいろいろな人々がいるからこそ、いろいろなライフセービングの形があることも知りました。

より深くライフセービングについて学び、経験を積みたいと強く感じた経験でした。

コロナ禍で大会なども中止や延期になってしまったこともあり、今年は学ぶチャンスの年としてIRBクルー→二級小型船舶操縦士→特殊小型船舶操縦士(ジェットスキー)→IRBドライバー→一級小型船舶操縦士→防災士を取得しました。一級小型船舶を取得したのは、二級の座学が興味深く、海のことを知るために海図や気象などをより学ぶことができたためです。またIRBクルーやドライバーの講習中には、オリパラでIRBに乗船された方々、ライフセーバーの指導者や日本代表の方など、経験豊富でご活躍されている素晴らしい方々とご一緒でき、学ぶことも多く、非常に刺激的な時間でした。不慣れで失敗も多かった私ですが、その時の言葉がけやサポートなどもみなさんはとてもすばらしく、励まされ、また心強く思い、ライフセービングは本当にチームワークも大切だということも改めて学べました。

<レース中の事故ゼロを目指して>

お恥ずかしいことに、ベーシックを受講するまでは、「離岸流」という言葉さえも知らず、また海の危険な生物などの知識もなく、OWS中岩場に打ち上げられた際、ガンガゼに手足を刺されまくり、大変な思いをしたこともありました。

海が荒れていたり、水温が低かったり、天候が不良だったりしたら、自分の体調や泳力を考え、決して無理をしない。
たとえ大会でも、厳しいと感じたらリタイアしたり、Swim Skipしたりする勇気も必要です。また大会前までに必ず当日着用するウェアやウェットスーツで泳いでみること。久しぶりにウェットを着る時は、ゴムが劣化していないか、体重が増減して自分のカラダに合っているかなど必ず確認をすること。そして当日の自身の体調、海の状況をしっかりと確認すること。食事や水分しっかりと摂っておくこと。前夜は飲みすぎや食べ過ぎないこと。しっかりと睡眠を取ること。

その他、基本的なことではありますが、Swimのタイムや技術の前に事故を防ぐために守ってもらいたい本当に大切なことです。

私はまだまだ経験も浅く、この「私とライフセービング」に投稿をされていらっしゃる方々とは経歴も比べものにならず珍しいケースとは思いますが、これからも競技者として、トライアスロンの審判員として、そしてライフセーバーとして、1人でも多くの方に、水辺の事故を防ぐための知識や、ライフセーバーの役割や必要性について知っていただき、だれもが安全に、笑顔で、スポーツや活動ができる環境を作っていきたいと切実に願っております。またSwimでの事故を防ぐために、トライアスリートやスイマーのみなさんにも、是非、BLSやベイシックを受講していただきたいと思っております。

これからもみなさまとライフセービング活動やトライアスロン大会などでご一緒できますことを楽しみにしております。

 

*お台場ライフセービングクラブ

2018年7月16日海の日に設立。2014年にお台場オーシャンスイムクリニックをスタートして5年目、お台場の地を拠点にトライアスロン活動をしてきましたが、オリンピックレガシーとして、全員がトライアスリートで構成するライフセービングクラブを立ち上げました。お台場でのライフガード業務はもとより、都心で唯一のビーチというロケーションを活かして、ライフセービングとトライアスロンの普及を両立させ、ジュニアの育成や各種講習会などを開催、お台場の環境整備にも貢献していきます。

篠原知美
Tomomi SHINOHARA

お台場ライフセービングクラブ 広報担当
東京都トライアスロン連合 女子委員会委員長

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