『津波警報発令時におけるライフセーバーの役割『率先避難者』とは。』
2011年6月、JLA津波シンポジウム開催。
東日本大震災の直後に沿岸部を襲った巨大な津波は、私たちライフセーバーにとってもショッキングな出来事でした。海で活動するライフセーバーにとって、自然の脅威を改めて感じさせられるものであり、その中で人間はいかに無力であるかを思い知らされるような出来事でした。あのような災害の中で私たちライフセーバーができることはあるのだろうか、とるべき行動は如何なるものか。すぐさま今後の対応について話し合うこととなりました。
2011年6月4日、静岡県下田市にあるホテル伊豆急にてJLA津波シンポジウムを開催されることになりました。このシンポジウムでは、津波警報発令時のライフセーバーの基本原則と行動、ならびに各海水浴場における具体的な津波対策について議論され、各関係者の方々から、津波に対するライフセーバーのとるべき行動、それをふまえた各浜、または教育の場での取り組み(津波対策)などについて発表して頂き、その後、総合討論を経てガイドラインを改定することとなりました。
この時すでにJLAホームページにて「ライフセービング活動ガイドライン・防災編(初案)」を公開いてしましたが、このシンポジウムの結果を反映して具体的な内容を記述した改訂版の作成となりました。
活動ガイドライン防災編
https://jla-lifesaving.or.jp/wp/images/about/for-lifesaver/01-bousai.pdf
日常的に予防対策を講じ、率先避難者になる
夏期海水浴場の開設期間において、その安全を管理するのがライフセーバーの役割となります。波が高くなるなど海のコンディションが悪くなれば遊泳注意や遊泳禁止とし、遊泳客を海から退避させることも行います。その場合は、遊泳客全員が海から上がったことを確認することになります。では津波警報発令時は、ライフセーバーが最後まで現場に止まり、遊泳客の全員が海から上がったことを確認した上で避難するべきなのか?
当然これまでは、「ライフセーバーは最後に避難するべきである」という考えもありました。しかし、あの巨大な津波を経験し、自然の脅威の中では無力であることを感じた我々が導き出した答えは、『日常的に予防対策を講じ、率先避難者になる』ことでした。
「率先避難者」とは、避難を呼びかけながら自ら率先してしかるべき避難経路へ避難誘導することで、正常化の偏見(ここは大丈夫だろう、自分は大丈夫だろう)により避難しない人の避難を促す役割を担う人のことをいいます。
まずライフセーバー自身が自らの命を守る。それができて初めて人の命を救うことができる。そのための「率先避難者」であるということです。そしてもう一つ重要なことは「日常的に予防対策を講じる」ということです。それはライフセーバー自身が生き抜く能力を身につけることであり、海岸利用者に対しても同様であり、さらに行政機関や地域の人たちとともに、ハザードマップの確認や避難訓練の実施、避難指示などの情報伝達の工夫などの予防対策を講じるということです。
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