【私の想い 2021.3.8】
下田ライフセービングクラブ ライフメンバー
中央大学ライフセービング部OB・OG会長
下田市議会議員
江田邦明
『津波警報発令時に大切なサインを見逃さないために』
2005年から津波フラッグを導入し地域での運用が始まった経緯
2004年12月にインドネシア西部で発生したスマトラ島沖地震により巨大津波が発生し、テレビ越しに巨大津波が陸地に押しよせる光景を目の当たりにしました。
静岡県では、1976年に発表された東海地震発生説を受けて以来、常に地震や津波への対策が重要な課題であるとされていましたが、2004年当時、下田ライフセービングクラブ(以下、下田LSC)内には、海水浴場での地震や津波に対応する、具体的な行動計画が存在しませんでした。そして、このようなマニュアルを制定する必要性と合わせて、サイレンや同報無線等の音響以外に、視覚でも地震や津波の危険を周知する方法が必要であると認識しました。
過去に私がオーストラリアに留学していた際、使用していたライフセービングマニュアルを参考に、視認性や使用意味を加味したうえで、既にオーストラリア全土で使用されている「シャークアラーム」が有効ではないかと考えました。
「シャークアラーム」とは海水浴場内にサメが出没したとき、海水浴客を海から一斉にあげる場合に掲出するものです。「シャークアラーム」に使われている旗は赤白の四分割の模様です。これは、世界共通で船舶間の通信に使用されている国際信号旗のU旗と同じ模様であり、U旗の意味は「あなたは危険に向かっている」を意味します。既に船舶の国際信号旗として使われているものと同様の模様であれば、今後、津波フラッグを世界共通のシグナルとして普及するうえでも最適であると考えました。
これらの経緯を説明のうえ下田市と協議し、下田市が啓発看板及び津波フラッグの整備、下田LSCが地震津波対応計画を策定することで合意し、2005年7月より下田市における「津波フラッグ」の運用が開始されました。
2011.3.11以前、以後で変わったこと
東日本大震災以前より東海地震の発生と津波襲来の危険性が高い地域であったため、大きな意識の変化はなかったと思われます。しかしながら東日本大震災以後、地震や津波に対する研究が進み、それぞれのメカニズムが解明されることで、各震源による最大津波高や最大浸水域、被害想定等が更新され、ライフセーバーとしての対応も見直しています。これまで、東海地震による下田市の被害想定は、震度6弱、津波高2.7~5.6メートル、津波到達時間10~15分とされていましたが、第4次地震被害想定では、南海トラフ沿いで最大クラスの地震発生で最大津波高は狼煙崎付近で33メートルや、相模トラフ沿いで最大クラスの地震発生で最短津波到達時間は3分など、これまで以上の被害に更新されています。
下田ライフセービングクラブでの実際の運用
下田市内の海水浴場で使用している「津波フラッグ」のサイズについては、監視塔などのポールに掲揚するもので短辺が約1.5メートル、パトロールタワーや波打ち際でライフセーバーが振るもので短辺が約1メートルとなっています。海水浴客への周知方法としては、津波フラッグ啓発看板を市内すべての海水浴場へ設置するとともに、定時の放送で「助けてサイン」と合わせて、津波フラッグ掲出の実演と避難説明を実施しています。海水浴客に対してこうした取り組みを継続して行うことで、浜辺では常に津波の危険性があることを意識してもらうようにしています。
ライフセーバー、行政、地域住民が協力してできる防災
静岡県は第4次地震被害想定をうけ、静岡方式による津波対策を推進しています。静岡方式とは、地域の意見を取り入れ市町と協働で推進するもので、防潮堤の整備、津波避難タワー・ビルの整備、津波避難路・標識の整備といった方法や対策を、地域ごとの文化・歴史、自然との共生及び環境などを考慮して選択するものです。下田市では年3回(9・12・3月)自然災害を想定した避難訓練を実施していますが、あくまで住民避難をその目的としています。夏期には観光客や海水浴客等で人口が2倍以上に増えるため、災害時における住民以外の避難活動が課題となっております。
津波発生時の避難行動について、特に海水浴場には観光客など地理不案内者が多いことが推測されます。こういった状況の中で、ライフセーバーは津波発生の危険を周知するとともに、危険箇所を避け高台へ効率的に避難させるための、誘導避難率先者としての知識と行動が重要であると考えます。
海水浴場の監視活動中のライフセーバーと
ライフセービングスポーツ・競技会にも積極的に参加する江田さん
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