【アカクラゲ】
アカクラゲは、鉢虫綱(はちむしこう) のヤナギクラゲ属に属するクラゲの一種です。
放射状の褐色の縞模様が16本走った直径9-15cmほどの傘と、各8分画から5-7本ずつ、合計で40-56本伸びる長さ2m以上の触手を持ちます。触手の刺胞毒は強く、刺されるとかなり強い痛みを感じます。
このクラゲが乾燥すると毒をもった刺糸が舞い上がり、これが人の鼻に入るとくしゃみを引き起こすと言われているため、『ハクションクラゲ』という別名を持っています。
また、その赤い縞模様から『連隊旗クラゲ』とも呼ばれています。
また一説によると、真田信繁(真田幸村)が、大坂夏の陣において、豊臣方の武将として徳川家康の本陣まで攻め込み、勇敢な活躍が歴史に刻まれていますが、その際にアカクラゲを乾燥させた粉末を使用したとされることから『サナダクラゲ』という異名をもっています。
⬛アカクラゲの生態
北海道以外の日本全国近海に広く分布生息しています。
ミズクラゲの大群の中に、アカクラゲがまれにいることがありますが、ミズクラゲを捕食することも分かってきました。
多くの場合、個体によっては2mも伸びる触手の刺胞毒によってとらえた小魚など、傘まで引き寄せ捕食するシーンがYouTubeなどでも閲覧することができます。
ということは、遊泳中にミズクラゲの群れに入ってしまったと認識した時には、長く伸びたアカクラゲの触手の危険性を予測し、ミズクラゲの群れから離れるのもリスク回避に繋がります。
春先では、東京湾の水深10m前後の場所で、大発生していることがあり、職業ダイバーに大きなストレスを与えているという報告もあります。
また、釣り人が垂らした釣り糸を巻き取ったときに、ヌルヌルしたアカクラゲの触手が大量に巻き付き、アカクラゲの触手とは知らず不用意に触れ、目でもこすった日には大変なことになります。
⬛アカクラゲの毒
アカクラゲも長い触手に無数の刺胞を持っており、刺胞から放出された刺糸(たんぱく質毒)は、人体に入ってくると強い痛みを感じます。写真は、上唇をアカクラゲに刺され腫れ上がってしまったものです。
多くの刺胞生物の毒同様、たんぱく質毒によるアレルギー反応のため、個人によって被害反応の程度は全く違ってきます。
怖いのは、刺されたあと数分から15分程度でアナフィラキシーショックを起こす可能性がある事です。
よって、刺されたと感じた場合、すぐに水から出ることが重要です。アナフィラキシー症状によって、溺水に繋がることがあるからです。
⬛予後対応
①触手が視認できる場合は、触手をピンセットやハンカチ、ビニール袋などで優しく刺激しないように取り除く。
②触手が巻き付いて、取り切れない場合のみ、海水で刺胞を刺激しないようにやさしく洗い流す。
③アカクラゲの毒は熱に弱いたんぱく質毒です。やけどをしない程度のお湯に30分程度、刺された箇所を浸けると、痛みが軽減され、予後が楽になる事が分かってきています。
④応急処置が済んだ後、すみやかに皮膚科など専門的な医療機関で受診することも重要です。
アレルギー反応を抑える処方薬が効果的と言われています。
★禁忌事項:アカクラゲに刺された場合は、酢酸(酢など)は刺胞を余計に刺激し、逆効果だということが分かってきています。一方で、アンドンクラゲなど箱型のクラゲには、酢酸(酢など)が刺胞を不活性化し有効とされています。
アレルギー反応により、個人によって反応が違うため、触手があきらかに残っていて、何クラゲに刺されたのかはっきり分からないときは、酢酸(酢など)の使用はやめましょう。
上記に示したように、触手が視認できない場合は、不用意に刺激しないよう海水などで洗い流すことなく③に進んでください。
いつの日か、アカクラゲを乾燥させ粉にして、ハクションクラゲが事実なのか自身で試そうかと思案中です。
まだまだクラゲについて様々な情報があります。
みなさんと一緒に楽しく知っていけたら嬉しいです。
海の知識
- 公益財団法人 日本ライフセービング協会(JLA)
- 海の知識
- Vol.3 – アカクラゲ