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海の知識

Vol.4 – カツオノエボシ

2023.02.14 (Tue)

【カツオノエボシ】


海に携わる方々は、多くの方がこのブルーの生物を目にしているのではないでしょうか?
カツオノエボシは、クラゲではなくヒドロ虫の仲間です。

英語で Jellyfish (ジェリーフィッシュ)と呼ばれるミズクラゲやエチゼンクラゲなどのい
わゆるクラゲとは異なり、1個体に見えるのは、実は多くのヒドロ虫が集まって形成され
た群体になります。

本州の太平洋沿岸にカツオが到来する時期に海流に乗ってきて、浮き袋の見た目が烏帽子に似ていることから三浦半島や伊豆半島でカツオノエボシと呼ばれるようになりました。

大きさ約10cmの透き通った藍色の浮き袋をもち。中には気体(主に一酸化炭素)が詰まっていて、これで海面に浮かぶ。浮き袋は常に膨らんでいるわけではなく、必要に応じてしぼみ、一時的に沈降することもあります。また浮き袋には三角形の帆があり、風を受けて移動することができます。カツオノエボシ自身には遊泳力はほとんどありません。

浮き袋から海面下に伸びる触手が何らかの刺激を受けると、表面に並んでいる刺細胞から刺胞が発射されます。刺胞には刺糸というタンパク質毒が含まれます。

人にとって非常に危険な生物です。触手に強力な毒をもち、刺されると強烈な電撃を受けたかのような激痛があります。患部は炎症を起こして腫れ上がり、痛みは長時間続きます。二度目に刺されるとアナフィラキシー・ショックというアレルギー症状が出る場合があり、カツオノエボシに刺されて、数分から15分くらいで発症するといいます。

応急処置
①海からあがって、安静に
カツオノエボシに刺されたら、すぐに海からあがって、安静にします。
痛みによりパニックを起こし溺れの原因や、時間差でアナフィラキシー・ショックというアレルギー症状が出て、溺れる可能性があるからです。

②触手を抜く
カツオノエボシの触手がついていたときは、やさしく取り除く。近くにあるタオルやプラスティックボード、ゴム手袋を使用して触手を除去する。刺糸が発射されていない刺胞を不用意に刺激しないようにするため。

③洗い流す
海水を使って、毒素を洗い流す。
真水や酢酸、アルコール、ビール、重層、サンオイル、コーラなどで洗ったり、砂でこすったりしてはいけない。(酢酸を使用するとアンドンクラゲなどには有効だが、カツオノエボシには刺胞を刺激し逆効果)
注意事項としてこの海水を事前にペットボトルなどに汲んでおき、雑菌が増える状況下での保管は控えてください。面倒ですが傷病者には波打ち際まで行ってもらい、優しく海水で洗い流すよう促してください。強くこすると不発弾になっている刺胞から刺糸が飛び出し悪化してしまいます。

④温めるか冷やす
応急処置は患部を45°C 程度の湯に浸すか、氷で冷やすかの二通りがある。温める事によりタンパク毒を不活性化させ痛みを無くす。刺された場所が熱をもっていれば、冷やし痒みを抑える。

 

カツオノエボシによる刺傷
刺胞毒の場合の多くは、刺された直後は跡がはっきりしません。
①10分程で腫脹があらわれ、数時間後に腫れと強い痒みが伴います。
②刺傷後、12時間から60時間後ぐらいが腫脹と痒みのピーク。
③刺傷部近辺のリンパ節が1~7日後から数日間腫れあがる。その後はゆっくりと回復。
④腫脹や赤班など形が完全に消えるまでには10日以上を要する。

 

今回の「海の知識」はいかがでしたでしょうか?

危険な海の生き物についても、皆さまが楽しく学んでいけることを心から望んでいます。

 

参考文献 三宅 裕志/Dhugal J. Lindsay,「最新 クラゲ図鑑: 110種のクラゲの不思議な生態」,誠文堂新光社,2013,127ページ

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