初めて認識したライフセーバーの存在
神奈川県の逗子市にある小坪という小さな漁師町で生まれ育ち、保育園の時から近所の磯場に遊びに行くような生活を送り、物心ついた時には釣りや素潜りなど海で遊ぶことが多かった。ライフセーバーを初めて認識したのは中学生の頃。サーフィンをしていた時に天気の急変と共に雷が鳴り始めた。その瞬間、浜からものすごい勢いで危険を知らせに来る人物がライフセーバーだった。その当時はその注意喚起を行うライフセーバーから逃げるようにその場を立ち去った記憶がある。

私のライフセービングの原点
高校を卒業し水泳仲間と鎌倉の海浜公園プールで監視員として活動が始まり、水上安全法や救急法などを学びながらひと夏を過ごしました。その時にお世話になった方よりマリブボードを頂き1年遅れで大学へと進学しました。
大学では自分自身を強くしたいという想いから空手部や少林寺拳法部などの体験をしながら、浪人時代の友人に誘われライフセービング部の説明会に行き入部を決めました。同期は60名くらいがいましたが浪人組も多く、まずは落ちた体力を戻すことから皆で必死に練習に明け暮れました。中でも青森山田高校の陸上部キャプテンだった彼の走りはまるで跳んでいるような姿で走り印象的でした。そんな全国からの猛者が集まる大学での練習は想像を超えており、ライフセーバーとしての精神力を鍛えるには申し分ありませんでした。
夏前になると部内で監視活動地を決める説明会があり、当時創設2年目だった現所属チームである和田浦の先輩たちから「一緒に作っていこう」という誘いを受け、迷うことなく和田浦で一番のライフセーバーになりたいと決心しました。そんな1年目の夏に和田浦で事故が起こり、自然に対する謙虚さや地元の人たちとの信頼関係の大切さを身をもって学ぶと共に本気でライフセービングを続けていきたいと思う根源になりました。

オーストラリアでの経験
大学在学中の2年生の時に部の合宿でマネージャーとして帯同が決まっていましたが、世界情勢の不安定さから合宿が中止となりました。しかしながら、私の中では本場オーストラリアでのライフセービングが観たく、2週間という期限付きで部を休部しゴールドコーストやシドニーのクラブを転々としながら現地での様子を見てきました。その経験を活かし、3年生、4年生の時に部で合宿を企画しシドニーにあるManlyLSCにお世話になりながらトレーニングキャンプを実施し同世代の現地メンバーとの親交を深め、社会人になってからもその仲間を頼り渡豪することや全豪に出場することが出来ました。
私がオーストラリアで感じたことは、言葉が上手く通じなくても、技術が劣っていても真剣にライフセービングを学ぼうとする人間に対し、一緒になり考え助けてくれる温かみを感じ私もそんな存在になりたいと憧れました。

ライフセービングという生き方
大学を卒業後、都内の幼稚園に体育教諭として就職しました。私の就職の条件はライフセービンを続けられる環境かどうかが大きく、部活動や残業があまりなく、週末や長期休みもある働き方はありがたい環境でした。その職場では職員に夏場のプール活動における緊急時の訓練や定期的なBLSの確認や子どもたちに海の話や他者への慈愛の精神を伝える場面がありました。困っている友達がいたら。怪我している友達がいたら。ゴミが落ちていたらなどなど。純粋無垢な子どもたちはいつでも真剣な眼差しで私の話を聞いてくれて、そんな子どもたちに私自身もさらに努力をしなくてはいけないと思わされ、毎日が充実した16年間となりました。その後、40歳を迎える年に一念発起し幼稚園を退職しこれまでのすべてを形にしたく起業し現在に至ります。
ライフセービングとは一人よがりの活動ではなく、沢山の「繋がり」の中で自分という存在が活かされ、他者という次の人との繋がりを作る活動なのだと考えています。だからこそ生涯をかけ活動を続ける魅力があり、限界や終わりという言葉がないように感じます。これからもライフセーバーとして自身を高め、未来に繋がるライフセービングを志していきます。

ライフセービングの可能性と今後の目標
2020年に立ち上げた湘南GoldenAgeアカデミー(以下、Goldenと省略)は世の中にある学習塾を運動に特化した塾としてスタートさせました。幼少期は体を動かすことが大好きな子が多いですが、年齢が上がるにつれ面倒になる子や他の習い事などから運動習慣が失われるケースがあります。また地域クラブやスクールなど特定のスポーツに限った団体は無数にあります。そのためそのスポーツに興味がないとなかなか運動を始めるきっかけを持てません。Goldenでは幼少期の神経系の成長が著しい時期から始められ、あらゆる運動やスポーツに精通するような内容でプログラムを組み、心身の成長や子どもの様子に合わせながらレッスンを進めています。また運動がやらされる時間にならないよう子ども自らが挑戦できるよう指導しています。そのため時には達成感や成果を実感するのに時間がかかりましたが、日を追うごとに子どもの表情や過ごし方が変わったという声を聴き保護者の理解を深めることも出来ました。そんな試行錯誤の日々を繰り返しながら事業拡大を進め、2021年よりGoldenのライフセービングチームを立ち上げました。

ライフセービングチームは未就学児(6歳)から受け入れており、現在の最上級生は高校生となっています。活動は週1回から多い人で週4回まで参加することができ、全員が同じ内容の活動に参加しており、上の学年は下の面倒を、下の学年は上の学年を追いかけながら大きな家族のような関係で時間を共にします。活動理念に「命を救うことが出来るスポーツ」を掲げており、やるからには全力で、諦めない忍耐力や精神力を養えるよう心がけています。ライフセービングの精神は日常生活にも深く精通し、ライフセービングのトレーニング要素は様々なスポーツに活きてくる可能性を秘めています。そのためGoldenのライフセービングのメンバーは他のスポーツと両立させながら頑張っている子が多いのも特徴です。また中学生以上になるとBLSやwatersafetyの資格が取得できるため時折練習に組み込みますが、その様子を見ながらいつしか小学生や未就学児でもBLSの流れを知り、年齢を問わず今の自分に出来ることを考え行動できるようになります。
今後、Goldenのライフセービングチームでは心・技・体を兼ね備え日本全国で活躍できるようなライフセーバーを育成することを目標におき、指導者自身も第一線で現場にいられる存在であることを目指し活動を続けていきます。
2000年 日本体育大学入学 ライフセービング部17期生として入部
2004年 目黒区 祐天寺附属幼稚園 勤務
2020年 退職
同年 湘南GoldenAgeアカデミー 設立
主な資格
日本ライフセービング協会 サーフアシスタントインストラクター
2級船舶
幼児体育検定1級