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私とライフセービング

Vol.98 – 後川 由眞 / Yuma USHIROKAWA

2026.11.02 (Mon)

私とライフセービング

生い立ちとライフセービングとの出会い

大学1年生の夏、初日の監視活動開始からわずか3時間で、僕は先輩に「僕にはライフセービングは向いていません。辞めます。」と言った。3歳から水泳を始め、幼稚園の頃から選手コースで活動してきた。中学生の頃には平泳ぎでジュニアオリンピックの決勝に進出し、高校2年生ではインターハイにも出場した。しかし、全国大会に出場するたびに、自分よりも速い選手たちのレースを目の当たりにし、自分はここまでの成績を収めることはできないと感じるようになった。次第に練習への意欲も薄れ、高校3年生ではインターハイへの出場を逃した。大きな挫折を味わった僕は、そのまま競技を引退した。

東海大学への進学が決まっていた僕は、入学前、大学のSNSを眺めながら、どの部活動やサークルに入ろうかと考えていた。そんなときに見つけたのが、東海大学湘南体育会ライフセービングクラブCRESTだった。当時、ライフセービングについてはほとんど知らなかった。それでも、水泳で培った力を活かしながら、人の役に立つことができるなんて最高じゃん!という軽い気持ちで入部を決意した。

ライフセービングを甘く見ていた自分

ライフセービングを始めた僕を待っていたのは、想像以上に過酷な日々だった。僕は幼少期から体が弱く、外で運動することも体育の授業くらいしかなく、学校と室内プールの行き来する毎日だった。直射日光を浴びながら行うレスキュー練習では、熱中症になることもあった。波酔いや吐き気に襲われ、身体的にも精神的にもつらい日々が続いた。さらには、脱水症状が原因で尿管結石にもなった。何度も「僕にはライフセービングは無理だ」と感じた。

そんな中、大学1年生の夏、初めての監視活動を迎えた。業務開始からわずか3時間で、僕は先輩に「僕にはライフセービングは向いていません。辞めます」と告げた。その後、僕は思うように監視活動へ参加できなくなった。何度もライフセービングを辞めようと考えたが、どうしても自分自身がそれを許せなかった。高校時代、水泳を中途半端な形で辞めてしまった自分。また同じことを繰り返していいのか。そう自分に問いかけた。
「俺は変わる。」そう決心した夏だった。

2か月間の監視活動期間のうち、実際に活動できたのは20日ほどだった。それでも、そんな僕を否定することなく、自分のペースで成長させてくれた先輩や同期、そして茅ヶ崎SLSCの皆さんには、感謝の気持ちでいっぱいだ。

2年目からは監視活動に参加することが当たり前になった。そして、ライフセーバーとしてどうすれば海の安全を守れるかを考えるほどにまで成長した。以前は苦しさしか感じられなかった監視活動を、次第に楽しいと思えるようになった。自分の活動が、海で遊ぶ人たちの楽しさや安全につながり、それが社会貢献になる。そのことを実感できるようになった今、監視活動は僕にとって大きなやりがいになっている。

私とライフセービングスポーツ

私はライフセービングスポーツを通じて、水泳をしていた頃とは比べものにならないほど多くの経験をさせてもらった。
学生選手権サーフレース2連覇、全日本選手権サーフレース優勝。学生選手権での総合優勝、全日本選手権での総合3位。HPTへの選出、そしてCRESTの2026年主将への就任。

主将として学んだこと

主将を務めることは、僕にとって大きな挑戦だった。チームを勝たせなければならないという重圧や、信頼されるライフセーバーを育てなければならないという責任があった。それでも、主将を経験したからこそ、自分自身と向き合い、仲間と向き合い、心身ともに大きく成長することができた。そして、僕がこの4年間で学んだことを、自分だけの経験で終わらせたくない。

苦しいときも逃げずに前を向いて努力すること。仲間の努力を認め、刺激し合って強くなり、互いに応援し合うこと。そして、競技の結果だけでなく、一人のライフセーバーとして成長し続けること。

こうした思いを、これからのCRESTを担う後輩たちに託したい。僕が先輩や仲間から受け取ってきたものを、今度は自分が後輩たちにつないでいく。それが、主将として最後の役割だと思っている。

私を成長させてくれたライフセービング

ライフセービングを始めた頃の僕は、身体的にも精神的にも弱く、目の前の苦しさから逃げ出そうとしていた。そんな僕が、たくさんの人に支えられ、何度も壁にぶつかりながらも努力を続けたことで、海の安全を守るライフセーバーとして成長し、全国の舞台で優勝できるようになった。そして、CRESTの主将として仲間と向き合い、自分一人では決して得られなかった景色を見ることができた。

振り返れば、ライフセービングは、泳ぐ力、漕ぐ力、走る力を鍛えたり、海で人の命を守る技術を身につけたりするだけのものではなかった。自分の弱さと向き合い、仲間の大切さを知り、誰かのために行動することを学べる場所だった。

ライフセービングは決して楽な活動ではない。思うようにいかない日もあるし、自分の無力さを感じることもある。それでも笑顔や安全を守るという大きなやりがいがあり、仲間とともに目標に向かって努力する喜びがある。

僕だから後輩に伝えられること

かつてライフセービングから逃げ出そうとした僕だからこそ、伝えられることがある。始めたばかりの頃にうまくできなくてもいい。自信がなくてもいい。大切なのは、すぐに自分の可能性を決めつけないこと。そして、仲間とともに一歩ずつ前に進み続けること。

あの夏、先輩に「辞めます」と告げた僕が、今ではライフセービングの魅力を伝え、次の世代へとつないでいこうとしている。ライフセービングを始める前の自分には、今の自分の姿など想像もできなかった。海の安全を守ることの大切さだけでなく、仲間と出会い、挑戦し、自分自身を変えていけること。その魅力を、一人でも多くの人に知ってもらいたい。あんなに弱かった僕を、ここまで成長させてくれたライフセービング。今度は僕が、その素晴らしさを誰かに伝え、次の誰かの人生を変えるきっかけをつくりたい。

それが、僕にとっての「私とライフセービング」だ。

後川 由眞
Yuma USHIROKAWA

東海大学湘南校舎ライフセービングクラブCREST 所属
茅ヶ崎SLSC所属
2026年度 CREST 男子主将

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